こたつ島ブログ

書き手 佐藤拓実(美術家)

天塩川日記⑨

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 (牛と目があう)

 

 の続き。恩根内滞在9日目。天塩川を辿る旅も大詰めです。

 

 

 

2019.5.9.

 

 

 

天塩川下流ふたたび

 

 6時半ころ起床、8時ころ出発。

 この日は再び下流方面へ。問寒別や雄信内を巡る。このあたりは何日か前に通ったエリアだが、車を停めてみることはしなかった。

 地図上でみても実際に辿ってみても、天塩川はずいぶんくねくねした川だという印象を受ける。その様を描いてみたいと思っていた。

 

 音威子府を通り抜け、中川町へ。

 空は危うい感じの曇り空で、「まるで僕がペンを持ったら降り出しそうな天気だ」と言って笑った。なんとか雨が降らないよう耐えてくれと祈る。時々車を停め、大友さんが写真を撮る。

 

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(木の生えた柵)

 

 9時ころ佐久橋を渡って中川町の佐久エリアを抜け、川を左手に見ながら北上する。

 パンケナイ川と天塩川の合流点で一枚描く。ここはちょうど天塩川がカーブしている部分でありながら、カーブの手前まではかなり直線的に流れているところでもある。天塩川ほどの大河になると流れの表情も様々だと感じる。10時ころまで描いた。

 ウトナイ川を通りぬけ、宗谷本線と幌延町の問寒別駅前を過ぎ平成橋を渡る。

 このあたりは天塩川のカーブのきついところがショートカットされた結果できたと思しき三日月型の池が何箇所にもある。しかし、なかなか池の様子が見渡せるような良い場所がない。

 新問寒大橋を渡って国道40号に戻る。

 11時ころから12時ころまで雄信内トンネルすぐ脇の天塩川がカーブしているところで絵を描いた。

 雄信内から安牛駅を過ぎ、幌延町を通っていく。

 13時前に幌延駅近くで車を停め、昼食にした。

 駅前の通りを歩いているとパン屋さんを見つけた。僕はコーヒークッキーパン(150円)と、カスタードメロンパン(180円)、塩パン(100円)を買った。どれも表面はサクサクしていて、中は柔らかく、うまい。

 

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 幌延の駅舎で座って食べた。駅内に「深層地層研究センター」の広告が。放射性廃棄物の処理研究施設らしい。やはりこういう施設は広告もいかにもお金がかかっている感じだ。

 

 

 

天塩川河口ふたたび

 

 ここまでくると天塩川河口まではそう遠くない。せっかくなので前来た時とは違う道で河口を再訪することにした。今度は北から、サロベツ原野を通り抜けていく。

 サロベツ原野(サロベツ湿原)は「利尻礼文サロベツ国立公園」に含まれる高層湿原で、枯れた植物が6千年をかけて泥炭となって積み重なってできた。ラムサール条約湿地になっている。

 まずサロベツ原野にある幌延ビジターセンターめがけて出発。

 ビジターセンターではそれぞれの季節の動植物のパネル展示や泥炭地を輪切りにした資料を見た。ヒシクイという鳥のぬいぐるみが置いてあり、その鳥が食べる菱の実の標本を見ると、前に天塩川河口に来た時に拾った謎の種子とそっくりであった。思わぬところで正体を知ることになった。

 

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ヒシクイのぬいぐるみ。なんと手作りのようだ)

 

 サロベツ原野を抜け、海岸沿いに河口へ向かう。原野のすぐ近くで砂を採取しているらしきところがあって重機が動いていた。

 

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 海に出ると左手に20機以上、大きな風力発電のプロペラがずらっと並んでいるのが見えた。オトンルイ風力発電所だ。

 原野を背景に白いプロペラが海に向かってそびえたっている。

 天塩川河口から見たとき、僕は蜃気楼でも見ているのかと思った。嘘のような光景だ。

 

 14時半ころ、5月3日以来、6日ぶりで天塩川河口についた。

 前に来た時は絵の具を忘れて来てしまった。この日は思う存分、色をつけて描くことができ大変満足だった。30分そこそこで描いたにしては、うまく描けた。

 前回は寄らなかった鏡沼公園に行き、松浦武四郎銅像を見る。武四郎が「天塩日誌」にまとめた天塩川を遡る旅も、ここ天塩から始まり天塩で終わったのだった。僕たちも天塩川を辿る旅ではじめに河口に来て、また終わりに河口に来ている。図らずも武四郎を追いかけてきたような恰好になった。

 15時半ころ帰路についた。帰り道では牛と目が合ったり、キツネがやぶから飛び出してきたりした。僕はいままであまり野生のキツネと遭ったことはなかったが、今回の旅では10日ほどの間で3回以上遭った。

  

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 中川町まで戻ってきて、橋のたもとで一枚描いた。

 

 恩根内へは18時過ぎに到着。

 

 明日は札幌に帰らなければならない(とは言っても僕は助手席に乗っているだけなのだが・・・)。

 もう一度天塩川温泉へ行き、疲れをとろう、ということになった。黒い色をした音威子府そばを食べ、湯に浸かった。いよいよ、明日で滞在が終わると思うと急にさみしくなってきた。

 20時半に帰宅。

 22時就寝。

  

 

 

 ⑩に続く。いよいよ最終回。