こたつ島ブログ

書き手 佐藤拓実(美術家)

天塩川日記⑧

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(岩尾内湖畔にて)

 

 の続き。天塩川を辿る旅も、とうとう8日目。

 

 

 

2019.5.8.

 

・「恩根内テッシ」

 

 滞在8日目。7時起床。朝ごはんを作ろうと寝ぼけながら台所に立つとどこからともなく脚の長いバッタがでてきてびっくり。これで目が覚めた。

 

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(恩根内テッシ付近?)

 

 8時過ぎに出発。前日から天塩川の由来になった「テッシ」を見たいと思っていた。恩根内大橋のすぐ近くにテッシがあるはずだ。こういう天塩川の情報は川下りをする人たちが共有しているようで、検索するとカヌーの上から撮影したらしい動画も出てくる。

 大友さんと川のすぐ近くまで行って歩いてみるも、それらしきものは何も見えず。雪溶け水やここ何日かの雨による増水で見えなくなっているのかもしれないと思う。

 

 気を取り直して、道の駅美深のオートキャンプ場内にあるテッシの碑と復元テッシを見に行く。復元テッシは本来は小さい池の中にあるはずなのだが水が抜かれていてかなりみすぼらしかった。

 天気が不安定だ。雨が少し降ってきたが出かけよう。

 

 

 

・士別へ

 

 今日は昨日に引き続き天塩川上流へ向かい、その源流を探ることに。

 名寄へ向かうのに高速道路に乗ると、そのすぐわきの大きな空き地でショベルカーが雪山を崩しているのを見かけた。途中、急に雨が強くなったりしていて先行きが不安になる。

 名寄で高速道路を降り、士別市へ。北海道には東の方に同じ読みの標津という地名があるので、こっちの士別を道民はしばしば「サムライしべつ」と呼んでいる。10時前には士別市内の天塩川沿いに出た。まだ雨は降っている。ずっと川に沿うように走っていく。

 西内大部川(にしないだいぶがわ)を越えた先で浄水場のような河川管理施設があった。近くまで行ってみる。やはり天塩川の水量は多い。流れは速く、大きな音を立てている。この辺は美深などの下流に比べると、だいぶ川幅が狭くなってきているように思える。

 

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(兼成橋から)

 

 上士別町にある兼成橋(けんせいはし)の付近で車を停めた。大友さんは写真を撮り、僕は橋の上から絵を描いた。やや黄土色に濁った水が岩に当たって白く波を立てていた。この岩こそが「テッシ」なのだろうか。橋の上から川をのぞき込むと、岸から大友さんが現れて躊躇なく川の中まで入りながら写真を撮っていた。11時半前まで絵を描く。

 

 

 

・岩尾内ダム

 

 岩尾内湖へ向かう。

 岩尾内湖は天塩川をせき止めて作られたダム湖だ。士別市朝日町の市街を通り抜け、12時ころ岩尾内ダムに着いた。

 管理棟に寄ると、入り口に「ダムカードあります」の掲示が。なんでもそれぞれのダムでは「ダムカード」というダムの情報をまとめたトレーディングカードのようなものを配っているらしい。せっかくなので事務所に貰いに行くと、「こちらがダムカード、こちらは記念ダムカードです」と言って二枚くれた。一枚は通常版で、もう一枚は「天皇陛下御在位三十周年」と書いてあった。ダムと天皇陛下にどういう関係があるのだろう?

 

 岩尾内湖をぐるっと巡るように走り、下川愛別線からさらに源流、天塩岳へ向かう。ずっと曇り空だったがやはり山の天気は変わりやすいのだろう、急に曇ってきて雨がぱらついたりした。途中、天塩川がぐっとカーブしているところで絵を描き始めたのだが、雨がひどくなりとても絵が描ける状態じゃなくなってやむを得ず車に退避した。

 

 

 

天塩岳

 

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天塩川上流) 

 

 13時ころ、「天塩岳登山口」と書かれた看板を過ぎた。みぞれ混じりの雨が降ってきた。だいぶ細くなった天塩川と並行して道が走っている。この辺までくると岸には雪が積もっている。

 傘を持って車から出るがどうにもペンだと雨でにじんで絵の描きようがない。鉛筆に持ち替えて描いてみたものの上手くいかず、もどかしい。

 

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(ポンテシオダム周辺)

 

 坂をしばらく上っていくと小さなダムがあった。「ポンテシオダム」といい、ダム湖は「ポンテシオ湖」という。

 山はすっかり雪景色で、5月だということを忘れそうな天気だ。その先のダム湖の脇で道は行き止まりになっていた。14時ころから、大友さんにお願いして車内でダム湖を描かせてもらった。雨が降ったり寒くなってきたら窓を閉め、1時間くらい絵と格闘した。

 

 15時ころ下山したら、ぱたと雨が止んだ。もしかして雪が降っているのは山の上だけなのだろうかと思った。

 麓の沢でも時おり車を停めて撮影。雨に濡れてしっとりとした緑が濃くみえ、鮮やかに映える。

 

 

 

・岩尾内湖の景色

 

 来た道を戻ってまた岩尾内湖へ。

 キャンプ場の駐車場に車を停め、大友さんと二人で寒い寒いと言いながらダム湖の写真を撮るなどする。砂利道は湖水の中に入って消えていた。この先に湖の底に沈んだ集落があるのだろうか。大友さんはずんずん水のあるところにも入っていく。湖面に反射した木々や山々がきれいだった。

 

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(岩尾内湖)

 

 16時過ぎ、ダム湖に隣接する展望台から見える景色をペン画で一枚描いた。またぽつぽつ雨が降ってきてインクをにじませた。16時半過ぎには帰路へ着く。夕日が射してきた。帰り道は雨上がりの気持ちの良い空だった。

 

 

 

・サフォーク

 

 17時半過ぎ、士別市街へ戻ってきた。夕食は「展示成功の前祝に・・・」などと言いながら名物のサフォークを食べられる店を探した。サフォークとは顔が黒い種類の羊だ。

 アイフォーンでちょっと調べて適当な居酒屋に入った。二人前のセットを頼む。ジンギスカン鍋で、もやしなどと一緒に特製のタレにつけて食べた。普通の羊肉よりだいぶ癖が少なく食べやすかった。僕は調子に乗ってチャーハンも平らげた。

 以前よりは楽になっているようだが、まだまだ腰が痛そうな大友さんを見かねて、居酒屋のおじさんが「テレビでみたんですよ」などと言いながら腰にあててゴロゴロするための、水が入ったペットボトルを貸してくれた。

 すっかり満腹になり18時半過ぎに士別市を出発。

 

 19時半ころ恩根内に到着した。

早く寝たいが我慢してもう一仕事。大友さんと相談しながら6月からの展示のフライヤーをつくった。

 23時ころ就寝。

 

 

 

⑨に続く。