こたつ島ブログ

書き手 佐藤拓実(美術家)

2022年まとめ(ベスト3展覧会とニュースと訃報)

(大阪・住吉大社

 

2022年を独断と偏見で振り返ります。

 

 

 

○目次

 

●展示の評価

●2022年・個人的展覧会ベスト3

●そのほか良かった展示

●2022年のニュースと訃報、見た展示まとめ

●2022年の個人的な振り返りと2023年の展望

 

 

●展示の評価

 この記事では2022年に開催された美術館の展示について自分なりに評価を試みていくのだが、その時前提として読み手に必要なのは評者のパーソナリティや評価基準、言い換えればバイアスだろう。

 そこで最初に書き手である私のパーソナリティについて少し言及しておきたい。

 私はアーティストとして制作活動を行う傍ら、たまに展示の感想文を書くこともあり、かつて展示企画を手がけたこともあった。現代のアーティストの展示や、版画全般、日本美術全般(特にあまり有名ではない近世・近代の日本美術)、シュルレアリスム、実験的な写真などが好きだ。一方、芸術祭やいわゆるソーシャルエンゲージドアートには苦手意識がある。また北海道生まれという事情から北海道史や全国の地方美術史にも興味を持っている。展示は上で列記した私の好みに引っかかるものを鑑賞するケースが多いが、有名なアーティストやデザイナー、建築家の展示であれば「とりあえず」という気持ちで見ることも多い。これらの性質を踏まえて読めば以下で綴られる評価の偏りも多少はご理解いただけるかもしれない。

 

 

 

●2022年・個人的展覧会ベスト3

 

 さっそくベスト3の展示についてここから書いていきたい。

 まず、塩竈フォトフェスティバル2022の展示「Stephen Gill『Unfold』」。

 塩竈フォトフェスティバルは塩竈で生まれ育った写真家・平間至氏を中心に2008年から開催され今回が7回目。5つあるメイン会場のひとつ塩竈市杉村惇美術館で開催された本展は、モーションセンサー付きのカメラで飛来する鳥を記録したり、写真を地面に埋めたり、道端で拾ったものをカメラの中に入れて撮影したり、夜の森を自動シャッターで写したりなど、実験的な独自の手法を用いて撮影を続ける写真家の国内初の美術館での個展。大規模ではないものの各シリーズの手法がよくわかる作品数で、撮影で使われた道端のゴミなど制作の背景を知るための資料もキチンとあって、展示手法自体も洗練されていて、言うまでもなく作品が面白く文句のつけようがない。今後私が写真展を見る時におそらく一つの基準になるであろう展示だった。

 


塩竈市杉村惇美術館「Stephen Gill『Unfold』」)

 

 

 
 長野県立美術館「生誕100年 松澤宥」。日本を代表するコンセプチュアル・アーティストの回顧展。構成としてはオーソドックスで制作活動の初めから終わりまでを年代順に追う。建築、詩、絵画を経て観念による芸術へと変遷する作風の変化の流れはもちろん通底するテーマも分かる。松澤のアトリエ「プサイの部屋」の再現もされていた。学生の頃から触れていながらどうにも心理的な距離が遠い作家であった松澤を自分なりに捉えて考えるきっかけが掴めた。松澤が人生のほとんどの期間過ごした下諏訪でもイベントが多数開催されていたようだ。

 そのほか、関連する展示としてART DRUG CENTER「松澤宥展・1998年愛知県佐久島での出来事」も思い出される。守章さんが同僚の本松満さんと松澤のパフォーマンスを見て交流を持ったことがきっかけで贈られた作品群はふたつに分けて保管されていたが東日本大震災で半分が失われたそうで、この展示では残った半分の作品を見ることができた。「オブジェを消せ」という啓示を受けた松澤の、消えた作品と消えなかった作品の展示と言えよう。

 

(長野県立美術館「生誕100年 松澤宥」)

(ART DRUG CENTER「松澤宥展・1998年愛知県佐久島での出来事」)

 

 

 

 町田市立国際版画美術館「彫刻刀が刻む戦後日本―2つの民衆版画運動」は中国の民主化運動が日本の社会運動へ影響を与えアマチュアに版画を広めた「戦後版画運動」へつながり、さらに綴方教育などとも絡みながら版画を教育の現場に浸透させた「教育版画運動」への流れを追う展示。「なぜ図工の時間に紙版画や木版画をやるのか?」という身近な話題に通ずるテーマ設定や、スタジオジブリの映画「魔女の宅急便」に登場する絵画の元ネタなど取っ付きやすいトピックも準備しながら、労働運動、環境運動、教育などの現場で作られた膨大な作品を全国から集め紹介しており日本美術史はもちろん社会学や教育学などの分野から見ても示唆に富む優れた内容だったと思う。

 

(町田市立国際版画美術館「彫刻刀が刻む戦後日本―2つの民衆版画運動」)

 

 

 

●そのほか良かった展示

 

 青森県立美術館東日本大震災10年 あかし testaments」は東日本大震災から10年の節目に合わせ開催されたいくつかの展示の中でも風化や忘却に抗い災厄をのりこえるというテーマ設定をきちんとキュレーションで伝えていた真摯な展示。個別の作品の評価や解釈は私の能力ではとても難しかったが時折図録などを見返して繰り返し味わい咀嚼したくなるものだった。

 

青森県立美術館東日本大震災10年 あかし testaments」)
 
 
 
 国際芸術センター青森小田原のどか個展 近代を彫刻/超克するー雪国青森編」は大熊氏廣の八甲田雪中行軍遭難事件を記念する彫刻《雪中行軍記念像(歩兵第5連隊遭難記念碑)》と、十和田湖畔の高村光太郎による一対の裸婦像《乙女の像》を対置することで青森に彫刻史の分岐点を見出し八甲田山の裾野に位置する会場で展開するというもの。このような視点は、地域の文物を表層的に解釈しアーティストが大喜利的に反応する展示とは良い意味で程遠く読み解き甲斐があった。ただ彫刻の台座と雪中行軍遭難事件の犠牲者の墓石の対比は、名前のある将兵を匿名的に扱う手つきに違和感があった。そのほか五輪塔を媒介にモニュメントの恒久性や義手・義足の彫刻史等、いくつもの論点へ言及しており研究の蓄積と今後の可能性が感じられた半面いくつかの題材は未消化だったようにも思えた。

 同時期に開催されていた「大川亮コレクションー生命を打ち込む表現」は、民藝運動に先んじ津軽の農村のオリゲラやオリハバキ、コギンの美しさに着目し私費で研究所を開設、工芸技術保存と製品の開発販売で農村の生活向上に務めた大川の収集品を紹介。ただ地域の文物を並べるのではなくて大川の取り組みや視点が伝わってくる展示で小規模ながら面白かった。人物に着目して展示を組み立てるのはひとつの有用な方法だなと思った。

 

国際芸術センター青森「小田原のどか個展 近代を彫刻/超克するー雪国青森編」)

国際芸術センター青森「大川亮コレクションー生命を打ち込む表現」)
 
 
 
 岩手県立博物館テーマ展「教科書と違う岩手の歴史ー岩手の弥生〜古墳時代」は美術展ではないが面白かったので言及しておく。題の通り縄文時代のあと飛鳥~奈良時代蝦夷(えみし)として岩手が日本史に「再登場」するまでの間、弥生~古墳時代の「空白期間」の歴史はどのようなものだったのかを主に考古遺物から考察する展示。日本海側と太平洋側の気候の違いや海上交通が盛んだった時代の文化の伝来のしやすさで関東以南や南東北はもちろん北東北という括りでも津軽や八戸、岩手でも辿ってきた歴史に違いがあることが示されていた。教科書で語られる平均化された歴史は大雑把な流れを把握する上では有用であるもののそれだけでは必ず見誤る事態があるのだと感じた(この展示については長々と感想を書いた)。

 

岩手県立博物館テーマ展「教科書と違う岩手の歴史ー岩手の弥生〜古墳時代」)

 

 

 

 旧観慶丸商店「DOMANI plus@石巻 つまずきの庭」は、写真家の志賀理江子とメキシコ・オアハカのアートシーンをリサーチしてきたキュレーターの清水チナツが「復興」の意味を再考し立ち止まって思考を巡らせるため展示といえるだろう。おそらく新作の志賀の映像作品、メキシコと石巻の関係を媒介する地震パンデミック、メキシコから贈られた版画、メキシコのトペという段差の風習、そして震災前から今までの志賀の軌跡を追うような書籍たちや写真が組み合わさって、インスタレーションというよりも緊張感がありつつどこか居心地の良い場所を生み出すことに成功していたと感じた。一日くらいかけてゆっくりと味わいたかった。

 

(旧観慶丸商店「DOMANI plus@石巻 つまずきの庭」)

 

 

 

 萬鉄五郎記念美術館「Café モンタン展」は、1960年代に盛岡市に開店した「CAFE モンタン」に関する展示。地元の若手芸術家や詩人、美術評論家、ジャズ評論家が夜な夜な集まり、盛んに展覧会やレコードコンサートが開かれ芸術家たちのコミュニティー形成の中心となっていた稀有な画廊兼スナックの歴史を作品やフライヤーなどで辿る。モンタンのような店があったということも面白いがそれを整理し展示に落とし込むことは簡単そうでなかなかできない。展示物では詩人の高橋昭八郎の「ポエム・アニメーション」と題されたブックアート的な作品が特に印象に残った。

 

萬鉄五郎記念美術館「Café モンタン店」) 

 

 

 
 「東北へのまなざし1930-1945」(岩手県立美術館福島県立美術館東京ステーションギャラリーへ巡回)は全6章構成で1930年代~40年代前半に東北を訪れた人々が見出した各地の文物を紹介する。建築家のブルーノ・タウトが仙台に設立された商工省工芸指導所でプロダクトデザインの技術指導を行っていたのは面白い(建築家なのに何故……?)。こけしがずらっと並ぶ展示室では昭和初期の社会状況が生み出した旅行ブームの中でいわゆる郷土玩具がどう流通しコレクターが生まれたのかにも触れられていて興味深かった。農林省の外郭組織として豪雪地帯の雪害の研究や産業の振興を行った「積雪地方農村経済調査所」にはデザイナーのシャルロット・ペリアンや今和次郎が関わっていた。いわゆる考現学で知られる今は民家研究の第一人者であったことは知っていたが、それが実際に雪国の環境に対応した住宅の研究で役立てられていたとは。今和次郎の弟の今純三が残した地元青森の考現学的な資料も展示されていた。展示の最後は福島県出身の洋画家・吉井忠が各地の農村や漁村を訪れ東北生活美術研究会を発足させたことについて紹介されていた。まだ父が存命だったころの宮沢賢治の生家に訪れた記録が目についた。その他、東京展の広報ビジュアルとそれに付随する「暮らし、機能、たくましさ」というコピーが、同展の岩手展と福島展のそれと全く違っていたのは、まさに現代の「東北へのまなざし」を感じさせられて面白かった。

 

(「東北へのまなざし1930-1945」岩手県立美術館、)
 

 

 

 国立ハンセン病資料館「生活のデザイン ハンセン病療養所における自助具、義肢、補装具とその使い手たち」ではハンセン病療養所の患者や回復者の生活動作を助けてきた道具の変遷を追いつつ使い手の映像や写真も交え展示していた。この展示はまず「生活のデザイン」という題が秀逸でデザインという語の見直しを迫られるような感覚を覚えた。全体から生活を自力で営むことが個人の尊厳にいかに切実に関わっているかが感じられた。資料の扱いも、食事に使う道具は畳に置いた食卓の上に並べて、サンダルや杖は使われる場所を想起させるタイルの床に置かれるなど、当然の配慮といえばそうなのかもしれないが細やかさを感じた。

 

(国立ハンセン病資料館「生活のデザイン ハンセン病療養所における自助具、義肢、補装具とその使い手たち」)

 

 

 

 SARP仙台アーティストランプレイス「坂本政十賜 Genius Loci 東北(仙台写真月間 2022)」は淡々と東北各地の民家を撮影したシリーズの展示。どこにでもあるなどとつい表現してしまいそうになるが並べて見せられると各家の個性が見えてくる。

 GALVANIZE gallery(石巻のキワマリ荘内)「かんのさゆり写真展 New Standard Landscape」は芝居のセットのような新しい住宅地の風景とブルーシートで隠される大地の対比が小規模ながら明快な写真展だった。

 どちらも写真を用い東北の住居という共通するモチーフを扱っていて印象に残った。

 

(「坂本政十賜 Genius Loci 東北(仙台写真月間 2022)」SARP仙台アーティストランプレイス)

(GALVANIZE gallery(石巻のキワマリ荘内)「かんのさゆり写真展 New Standard Landscape」) 

 

 

 

 宮沢賢治イーハトーヴ館「沢村澄子 現象的書展」は書家が宮沢賢治の言葉をテーマとした個展。他のアーティストとのコラボレーションや屋外のインスタレーション、敷石を用いた書など自分がイメージしている書が拡張される感覚があり刺激的だった。

  

宮沢賢治イーハトーヴ館「沢村澄子 現象的書展」)

 

 

 

 SEVEN BEACH  Light Up Fes 2022 では、大学で建築を学んだメンバーで構成され、展示や什器をデザイン・設計し制作してきたチーム「ダウナーズ」の作品を見た。全長100メートルの円形ベンチは表面が銀のシートで覆われており周囲の景色を映りこませつつ造形がシャープに際立って見えるようになっている。制作にあたって海岸線や防波堤、利用目的によるエリア分けなど、砂浜の既存の秩序を横断する造形を目指したのだという。ベンチに座って海を眺めているとサウンド・アーティストの鈴木昭男の作品「点音(おとだて)」 が思い出された。ふと今回のダウナーズの作品は、あくまで空間そのものを主体として扱いつつ空間のコンディションを整えるようなものなのかもしれないと思った。もしかすると新たに絵画や彫刻のような作品を設置するよりも、ダウナーズのようなやり方の方がその空間の意味を大きく変える可能性を孕んでいるのかもしれない。

 

(SEVEN BEACH  Light Up Fes 2022 ダウナーズ作品)

 

 

 
 福島県立美術館没後200年亜欧堂田善 江戸の洋風画家・創造の軌跡」は田善の生涯を辿り後世への影響にまで言及するオーソドックスな回顧展。現存作の大多数が見られイメージソースになった洋書との比較にも気が配られていて微妙に細部が違う同じ画題の作品の比較もできる誠実な展示だった。製版道具や銅版、銅版画を布に刷って煙草入れや手拭いにした資料なども興味深かった。個人的には代表作の《浅間山図屏風》《両国図》が展示替えで見られなかったのが残念。マイナーだが優れた絵師である田善に、これを機に注目が集まると個人的には嬉しい。

 

福島県立美術館「没後200年亜欧堂田善 江戸の洋風画家・創造の軌跡」)

 

 

 

●2022年のニュースと訃報、見た展示まとめ

 

ここからは2022年のニュースと訃報、見た展示を備忘録的に書き連ねていく。見て

 
【1月】

●主なニュース

・東大前で受験生ら刺傷

・トンガで海底火山噴火

●訃報

・水尾比呂志(美術史家)

水島新司(漫画家)

●展覧会など

9日

岩手県立美術館「菅木志雄展 〈もの〉の存在と〈場〉の永遠」

・盛岡てがみ館「台湾と岩手の先人たち」

16日

青森県立美術館東日本大震災10年 あかし testaments」

17日

国際芸術センター青森「小田原のどか個展 近代を彫刻/超克するー雪国青森編」

・「大川亮コレクションー生命を打ち込む表現」

 

岩手県立美術館「菅木志雄展〈もの〉の存在と〈場〉の永遠」)
 
 
  

【2月】

●主なニュース

・博物館法改正案閣議決定、博物館の登録対象を拡大。

・ロシア軍、ウクライナ侵攻

・令和3年度日本芸術院会員候補者を発表。千住博(絵画)、宮瀬富之(彫刻)、星弘道(書)、伊東豊雄(建築・デザイン)、五木寛之(小説・戯曲)、ちばてつや(マンガ)、つげ義春(マンガ)、野村万作能楽)、小澤征爾(洋楽)。

●訃報

石原慎太郎(政治家、作家)

西村賢太(作家)

●展覧会など

6日

岩手県立博物館テーマ展「教科書と違う岩手の歴史ー岩手の弥生〜古墳時代

10日

東北芸術工科大学卒業制作展

・上山温泉へ宿泊

11日

・奇祭・加勢鳥を見学

せんだいメディアテーク「マムアンちゃんと東北 ポップアップショップ」

20日

秋田公立美術大学卒業制作展

 

東北芸術工科大学卒業/修了研究制作展)

  

 

 
【3月】

●主なニュース

ウクライナ大統領が日本の国会でも演説

美術手帖、季刊化を発表

林道郎美術評論家上智大教授)懲戒解雇

・「1_WALL」終了が発表

香川県庁舎(丹下健三)、重文指定。戦後の庁舎建築として全国初。

・3月16日に発生し宮城県福島県震度6強を記録した地震の影響でせんだいメディアテーク宮城県美術館が臨時休館。

プリツカー賞で初のアフリカ出身の建築家、ディエベド・フランシス・ケレが受賞。

●訃報

・金秉騏(画家)

・西村京太郎(小説家)

・池田修(「BankART1929」代表)

菊地信義装幀家

宮崎学(作家)

●展覧会など

1日

・映画「フレンチ・ディスパッチ」を見る

6日

・旧観慶丸商店「DOMANI plus@石巻 つまずきの庭」

石巻のキワマリ荘「かんのさゆり New S tandard Landscape」

・ART DRUG CENTER「松澤宥展 1998年愛知県佐久島での出来事」

塩竈フォトフェスティバル2022(「Unfold Stephen Gill」など)

・TURN AROUND「菊池聡太郎 個展 Good L anding」

13日

・東京アートフェア2022

神奈川県立近代美術館鎌倉別館「山口勝弘展-「日記」(1945-1955)に見る」

東京オペラシティアートギャラリー「ミケル・バルセロ展」「project N 85
水戸部七絵」

・森アーツセンターギャラリー「楳図かずお大美術展」

14日

善光寺 参拝

・長野県立美術館「生誕100年 松澤宥

15日

・ポーラ美術館「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」

 

(ポーラ美術館「ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」)
 

 

 
【4月】

●主なニュース

東北新幹線、全線で運転再開

知床半島沖で観光船が沈没

・フランス大統領選、マクロン再選

・「美術分野における報酬ガイドライン策定のためのアンケート」の結果発表(「art for all」実施)

・日本からロシアへ返却中の美術品、フィンランド税関が押収。

中銀カプセルタワービル(黒川紀章)解体工事開始

・アーツ前橋のアドバイザーに萩原朔美が就任

大地の芸術祭で修学旅行生がクワクボリョウタ作品を破損

●訃報

見田宗介社会学者)

・ヘルマン・ニッチ(オーストリアのアーティスト、「ウィーン・アクショニズム」)

藤子不二雄(A)(漫画家)

ひろさちや(作家)

●展覧会など

12日

東京都写真美術館「写真発祥地の原風景 幕末明治のはこだて」

13日

板橋区立美術館「建部凌岱 その生涯、酔たるか醒たるか」

森美術館Chim↑pom展:ハッピースプリング」+別会場

日本橋三越「芸術の流通 久松知子展」

17日

萬鉄五郎記念美術館「Café モンタン展」

 

東京都写真美術館「写真発祥地の原風景 幕末明治のはこだて」)

 

 

 

【5月】

●主なニュース

・韓国大統領に尹錫悦が就任

・沖縄復帰50年

InstagramがNFT機能導入を発表

ルーヴル美術館で《モナ・リザ》にケーキが投げつけられる

●訃報

金芝河(韓国の詩人、民主化運動)

●展覧会など

7日

岩手県立美術館「東北へのまなざし1930-1945」

19日

・町田市民文学館ことばらんど「将棋作品をひもとく! “読む将”のススメ展」

・町田市立国際版画美術館「彫刻刀が刻む戦後日本―2つの民衆版画運動」

20日

東京国立博物館「沖縄復帰50年記念 特別展『琉球』」

東京国立博物館 本館 特別1室・特別2室「東京国立博物館の近世仏画―伝統と変奏―」

・gallery TOWDO「韓国画と東洋画と」

・アンプチガラージュ「荒井理行 絵画のように / like paintings」

・CON_「界面体」小寺創太、千葉大二郎、山縣瑠衣、BALL GAG

 

(gallery TOWDO「韓国画と東洋画と」)

 

 

 
【6月】

●主なニュース

・侮辱罪厳罰化、改正刑法成立

・英女王在位70年でパレード

・3331 Arts Chiyodaが2023年3月31日をもって千代田区と契約満了することが明らかに

・「ドクメンタ15」開幕。出品作品に反ユダヤ主義の表現が見られ撤去される。

・米連邦最高裁判所が人工妊娠中絶を「憲法上の権利」と認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を下す

●訃報

出井伸之ソニー元社長)

●展覧会など

11日

チャグチャグ馬コを見にいく

16日

・映画「犬王」

18日

盛岡市先人記念館「中井汲泉の世界」

 

 

 

【7月】

●主なニュース

東京都庭園美術館の館長に妹島和世が就任

KDDI、全国で通信障害

・安倍元首相、銃撃され死亡

美術評論家連盟、「ハラスメント防止のためのガイドライン」を制定・発表

・画像生成AIプログラム「Midjourney」のオープンベータ版が公開

文化庁、「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)」を公表

岩波ホール閉館

●訃報

・唐仁原教久(イラストレーター)

・クレス・オルデンバーグ(アメリカのアーティスト、ポップアート

イリナ・イオネスコ(写真家)

・林田嶺一(美術家)

・尾形香三夫(陶芸家)

小川隆吉(アイヌ民族共有財産裁判原告団長、アイヌ民族文化伝承の会会長)

●展覧会など

2日

・おいらせ町 氣比神社

八戸市美術館「まるごと馬場のぼる展 描いたつくった楽しんだニャゴ!」

・八戸ブックセンター「紙から本ができるまで/土から土器ができるまで」

24日

幕別町 蝦夷文化考古館

幕別町ふるさと館

27日

・墓参

・土の館(トラクタ博物館)

上富良野町開拓記念館

・あかがわ

・ファーム富田

・中富良野郷土館

28日

・北海道博物館「クローズアップ展示2 生誕200年 絵師・平沢屏山」

29日

・ギャラリー門馬「ままならぬまま 葛西由香」

31日

・東川町文化ギャラリー「第38回写真の町東川賞 受賞作家作品展」

 

八戸市美術館「まるごと馬場のぼる展 描いたつくった楽しんだニャゴ!」)

(土の館 トラクタ博物館)

 

 

 
【8月】

●主なニュース

・「GEISAI」8年ぶりに復活

文化庁メディア芸術祭、公式ホームページで次年度の募集は行わないと発表。

・表現の現場調査団が「ジェンダーバランス白書2022」を発表

ICOM(国際博物館会議)、ミュージアムの新定義案を採択

●訃報

オリビア・ニュートン=ジョン(歌手)

イーフー・トゥアン(地理学者)

三宅一生(デザイナー)

森英恵(ファッションデザイナー)

・篠田太郎(美術家)

稲盛和夫(京セラ創業者)

ゴルバチョフ(元ソ連大統領)

●展覧会など
26日

・国立ハンセン病資料館「生活のデザイン ハンセン病療養所における自助具、義肢、補装具とその使い手たち」

東京国立近代美術館ゲルハルト・リヒター

・GALLERY枝香庵flat「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」

27日

・原爆の図丸木美術館「蔦谷楽 ワープドライブ WARP DRIVE」

・川越 本多商店

 


東京国立近代美術館ゲルハルト・リヒター」)

 

 

 

【9月】

●主なニュース

・帝劇ビル(出光美術館が入居)が建て替えを発表。

・西九州新幹線が開業

鳥取県が購入したアンディ・ウォーホル《ブリロの箱》に対し県民から異論相次ぐ

●訃報

・エリザベス2世(イギリス国王)

鈴木志郎康(詩人)

ウィリアム・クライン(写真家)

宮沢章夫(劇作家)

・小川東州(書家)

・ジャンリュック・ゴダール(映画監督)

佐野眞一(ジャーナリスト)

三遊亭円楽(落語家)

●展覧会など

24日

・みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2022

・長源寺本堂

・仙台アーティストランプレイス【仙台写真月間 2022】坂本政十賜「Genius Loci 東北」「分室 植田優子」

 

長源寺本堂(後藤市蔵によるセメント彫刻)

 
 
 
【10月】

●主なニュース

・「南三陸311メモリアル」開館

・直島の草間彌生《南瓜》が復元再設置

カニエ・ウェスト反ユダヤ主義的内容の投稿を行いTwitterのポリシー違反で削除

ダミアン・ハースト、3億円分の作品を燃やす

名古屋テレビ塔内藤多仲)、重文指定

・ロンドンのナショナル・ギャラリーでゴッホ《ひまわり》に環境団体のメンバーがトマトスープ(ハインツのトマト缶)をかける。後にモネの《積みわら》、フェルメール真珠の耳飾りの少女》、ゴッホの《種をまく人》、アンディ・ウォーホル「キャンベル・スープ缶」シリーズ、クリムトの《死と生》なども標的に(ムンク《叫び》も未遂)。11月には「ICOM(国際博物館会議)」が声明を発表。

福島県の帰還困難区域内の展覧会(「Don't Follow the Wind」)の一部が初めて一般公開

・東京都人権部が飯山由貴の映像作品を検閲、不当な上映禁止判断を受け11月には都議会議員向け上映会を開催。

・イタリア、右派連立政権が発足。初の女性首相に極右党首

・イギリス、トラス首相が辞任、新首相にスナク氏

・韓国ソウルで雑踏事故

●訃報

・ピエール・スーラージュ(画家)

一柳慧(作曲家)

永田竹丸(漫画家)

仲本工事(コメディアン、ミュージシャン、ザ・ドリフターズ

●展覧会など

4日

宮沢賢治記念館

宮沢賢治イーハトーヴ館「沢村澄子 現象的書展」

・Cyg art gallery「中嶋幸治 横たわろう、通過せよ」

8日

・SEVEN BEACH  Light Up Fes 2022 ART area ダウナーズ

 

 

 

【11月】

●主なニュース

ジブリパーク開園

合同会社カオスラ元代表黒瀬陽平ほかスタッフ2名を相手取り不当解雇やパワーハラスメントを受けたとし起こした訴訟の一審判決。

・上海のアートフェア「ART021」が急遽閉幕

・CCGA現代グラフィックアートセンターが展覧会と教育普及活動を終了を発表

・ヴァンジ彫刻庭園美術館クレマチスガーデンが休館を発表

入江泰吉奈良市写真美術館がメタバース上で写真展を開催

社会学者の宮台真司が大学構内で何者かに切りつけられる

●訃報

芳賀日出男(写真家)

・吉岡宏高(NPO法人炭鉱(ヤマ)の記憶推進事業団理事長)

崔洋一(映画監督)

江沢民(元中国国家主席

 ●展覧会など

26日

大阪天満宮 参拝

・堀川戎神社 参拝

・大阪中之島美術館「ロートレックミュシャ パリ時代の10年」

・大阪中之島美術館・国立国際美術館「すべて未知の世界へ GUTAI 分化と統合」

・SUNABA GALLERY「梅原あずさ個展 古い夢の歌」

27日

・高津宮 参拝

・高津山 報恩院 参拝 

生國魂神社 参拝

天王寺動物園

・千鳥文化

夫婦善哉

・映画 「夜明けまでバス停で」

28日

住吉大社 参拝

・京都芸術センター「DAZZLER」

29日

京都国立博物館「京に生きる文化 茶の湯

細見美術館「響きあうジャパニーズアート」

・PURPLE「GOOD BYE PHOTOGRAPHY」

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA「LICHT」「圧縮と解凍」

Hotel ANTEROOM京都 ギャラリー9.5「問題のシンボライズー彫刻・身体・男性性ー」

30日

福島県立美術館「没後200年亜欧堂田善  江戸の洋風画家・創造の軌跡」

 

細見美術館「響きあうジャパニーズアート」)

 

 

 

【12月】

●主なニュース

・2022年「Power 100」発表。1位はルアンルパ。

・2022年ターナー賞をヴェロニカ・ライアンが受賞。史上2人目の黒人女性。

サザビーズが創業278年で過去最高の約1兆800億円の総売上高を記録。

杉田水脈氏、政務官を辞任。

ヨコハマトリエンナーレ2023が会期延期。半導体不足による横浜美術館改修工事遅れのため。

●訃報

吉田喜重(映画監督)

・あき竹城(タレント)

渡辺京二(歴史家)

磯崎新(建築家)

ヴィヴィアン・ウエストウッド(ファッションデザイナー)

・ペレ(サッカー選手、元ブラジル代表)

●展覧会など

3日

岩手県立美術館 常設展「特集・堀江尚志」

 

 

 

●2022年の個人的な振り返りと2023年の展望

 2022年の訃報でショックだったのはアーティストでは林田嶺一だ。アウトサイダーアート的に語られがちな方だが北海道の画壇ではそれなりの評価を受けてきた人でもあり、もっと広い射程で検討されるべき人物だと常々思っている。芸能人ではオリビア・ニュートン=ジョンで小さい頃から聞いていた歌手だった。西村賢太石原慎太郎の追悼文読売新聞に寄せた直後に亡くなったのも印象深い。

 

参考:櫛野展正連載29:アウトサイドの隣人たち 「死んだふり」の流儀|美術手帖

 

 良し悪しは別として遠出が許されるように社会の雰囲気が変わってきたのが2022年だった。私も初めて長野市善光寺大阪市内の各地を訪れ、久しぶりに京都で遊ぶことができた。特に住吉大社を訪れることができたのは嬉しかった。

 

住吉大社) 

 

 個人的な生活の話をすると、私は2021年秋に関東から東北に引っ越して、それまでと仕事内容や生活のリズムが大きく変わった。2022年は見たい展示はそれなりに見ることができたものの(とはいえ見に行けず悔やんでいる展示はいくつもある)、生活のリズムが変わった影響がまだあり映画もほとんど見られず本も落ち着いて読めなかった。特に2022年前半はなかなか制作活動もできなかった。孤独を感じることが多く、たまに遠方の友人と長電話をしたりSNSの音声配信機能でしゃべるのが救いだった。2022年後半になってやっと仕事に慣れ、まだ成果は何も出ていないが少しずつ制作活動を始めることができている。2024年までにどこか雰囲気のよい場所があれば小さな個展を開いてみたい(よいギャラリーがあればぜひ紹介してほしい)。

 仕事上ではそれなりの成果を出した自負がありいくつか面白い出会いもあったが、必ずしも評価には結びつかず、基本的には頭の容量を割かなければならないのを苦痛に思うような業務が多い(似たような思いを持つ方も多かろう)。適切にうまくこなす技術を身に着けたい。

 私の怠惰であまりきちんとブログで言及できなかったが東北芸術工科大学秋田公立美術大学の卒業制作展を見られたのも良かった。

 ほぼなにもしていないに等しい2022年ではあったがこのブログと並行して書いている絵馬ブログだけは何とか月一回の更新を続けられた。絵馬の研究については、まだ何かをまとめるには蓄積が足りないと思われるので、もうしばらく辛抱して続けたい。

 

 展示を見る量は年々減っている。ほとんど夢のような話になるが、できれば2023年はもっと見る量を減らして本当にいい展示だけを見たい。時間を捻出して、例えば決まったテーマの本を数冊じっくり読むなど展示以外のインプットにもっと時間を使いたい。こういう考えになっているのは、もしかすると「展示」や「作品」というものに飽きてきているのが原因かもしれない。2023年はフットワークはあくまで軽く、しかし物事に向かう姿勢はしっかり腰を据えて自分の知識を深めるようになりたいものだ。

 

 

 

(終)