2016年 冬の札幌の展覧会 札幌美術展 モーション/エモーション ―活性の都市― (札幌芸術の森美術館)

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 1948年から続く「札幌美術展」シリーズ。
 モーションとは物理的な動き(動作)、エモーションとは心の動き(感動)である。活性とは機能や効率が向上したり、反応が活発だったりすることである。この展覧会では生命体のように活動を続ける都市をテーマとし、9名の作家を紹介している。
 
 最初の武田志麻は、山並みや木などを木版画で繰り返し彫り、画面を構成することが特徴的な作家である。一見牧歌的な風景のみに興味がある作家に見えるが、「組曲パリ」(2012)のように大都市も描いている。作品には増殖するものとしての生命体観が共通してあり、この展示にはうってつけの作家と言える。
 
 山川真一は派手な色づかいで立ち並ぶビルを描く。こういうと作品を矮小化するかもしれないが、都市への興味というよりは構成のための題材として都市があるように見える。
 
 楢原武正は「大地/開墾」で抽象的に人間の営みを描く。例えば三角形の構築物ひとつとっても、雄大な山にも見え、バベルの塔にも見え、創造力を刺激させる。この展覧会の都市像の幅を広げていると思えた。
 
 羽山雅愉は港町を題材にしながら、蜃気楼の中の幻のような風景画を描く。それは幻想的な色づかいに加え、独特のフワフワした遠近法やコントラストの使い分けによってもたらされることに気付いた。
 
 千葉有造は無機的なアクリル板を組み合わせることによって有機的な造形物を作る。この流れでみれば、都市の比喩のように見えなくもない。
 
 安藤文雄は、夕張を、産炭地として栄えていたころから衰退するまで撮り続けた写真家。初見だった。
 
 野澤桐子は細密な肖像画の作家。札幌に生きる人々の肖像として紹介されていた。
 
 クスミエリカの作品は、なかなかうまく言い表しにくい独特なデジタルコラージュである。主な題材は動植物と人間である。それらにビルや工場なども組み合わされている。大きな構図としてはまとまりをもって見えるが、細部のモチーフの組み合わせは接合が生々しい。その違和感はシュルレアリスム的な関心によるものだろうが、それだけではないようにも思う。「都市と自然」という言葉を思い出さずにいられない作品だった。
 
 森迫暁夫はシルクスクリーンや陶板でインスタレ―ションを制作。水の循環や植物の成長をモチーフとし、かわいらしい八百万の神「かみちま」をそこかしこに配置して、親しみやすい自然観を示して展覧会を締めくくった。
 
 全体として、様々な都市観が示されているということはいえそうだ。強いて安直にいえば、自然と人間との関係を重要視するようなところが札幌や北海道独自なのかもしれない。