札幌国際芸術祭2017(SIAF2017)見聞②

 

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 (金市館の受付)


 の続き。札幌国際芸術祭を見ました。その記録です。まだまだ一日は終わらない。
 
 以下ネタバレ注意。
 
 目次

 1.金市館の展示

 2.500m美術館「シュプールを追いかけて」

 3.HUG さわひらき「うろ・うろ・うろ」

 4.DJ盆踊り

 

 

 
 8月14日 ②

 

 

 1.金市館の展示
 
 金一館ビル7階のエレベータの扉があくと、丸い衝立のような受付があった。薄暗いフロアがまるごと梅田哲也の作品だ。

 

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 蛍光色で「わからないものたち」と殴り書きされている。これが作品タイトルだ。他にも無造作に何枚か張り紙がしてあり、ガラクタがたくさん置いてある。

 
 順路は向かって左。木瓜紋の入ったすりガラスの戸を押して進むと目の前がぱっと明るくなり、思わずわぁっと言いながら駆け出してしまった。苔のような色のカーペット?と謎のガラス球。背後は窓越しに札幌の街が眺められ、そして眼下には狸小路の屋根が。「この建物にこんな景色を眺められる空間があったのか!」と、驚きながら行く手を見るとまた丸い衝立と、壁に埋まった半球。柵の奥にはガラス球やチューブや木製パレットなんかが組み合わさったものがあり、時たまブシュッ、ブシュッと音を立てている。なんだかよくわからないが好奇心を掻き立てられる光景だ。

 

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 何があるのか不安に思いながらフロアの奥へすすむ。この先はさらに暗くなっている。回転するサーチライトのようなもので部屋が端から順に照らされていく中に、またガラス球やらスピーカーやら、点々と置いてある。ずっと、どこからか途切れ途切れ、物をこすったような音がしている。無意識に光を目で追ったり、音がした方を反射的に見たりしながら会場をしばらくうろうろした。飽きない。

 

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  あるものは刻一刻と変化し動き続け、またあるものは発光し、あるものは意味ありげにそこにただ置かれ・・・とても言い尽くせるような状況ではないが、私はそれらを注意深く眺め、耳をそばだて、何かの気配を感じようとし、会場ではいったいなにがどうなっているのかを理解しようと努めた。より正確に言うなら、私は作品によってそうするように仕向けられた。鑑賞者は操られている風でありながら、自ら操られに行っているような共犯者でもある。そういう危うさやスリルも覚えた。

 

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 この作品で気になったのは、会場にあったものを利用していながら場所の固有性を感じさせるモチーフがあまり見当たらないことだ。金市館という場所をよく知っている人ならば作品にこの場所らしいモチーフを見つけられるかもしれないが、2、3か月に一度、古本市を覗くくらいの利用だった私にとっては、ここは紛れもなく金市館(私に馴染みのある名前で言うならラルズ)でありながら、どこか別の次元や時間軸にある空間のようにも感じられる。梅田さんと作品設置場所との間に微妙な間合いというか距離感の取り方があるのだろう。

 
 また、一見無秩序で中心がないインスタレーションなのだが、様々な球体をあちこちに配していて、全体の不思議なつながりが見て取れたのが気持ちよかった。おそらく昔からあったであろう壁の半球や丸い窓の他、水の入ったガラス球、円形の衝立、ガラスの浮き球などがそれだ。

 

 「わからないものたち」は、巧妙な仕掛けが施されているであろう空間を、反射的に感じとっていくことで鑑賞する作品だった。金市館はかつてどのような姿だったのか、また梅田さんの手によって金市館がどのように変容し作品になったのか。この会場に置かれているものたちはどういう来歴をもち、どういう意味が込められているのか。それらは私にはまったくわからない。だが、そういうわかり方とは別のわかり方を示すのが「わからないものたち」なのではないか、とも思った。

 
(参考、梅田哲也インタビューアーティスト・インタビュー:梅田哲也(アーティスト、パフォーマー) | Performing Arts Network Japan パフォーマンスの様子もいくつか動画サイトで見られる Tetsuya Umeda - YouTube など)。
 

 

 
 その後ジュンク堂をちらっとみた。SIAF関連コーナーもあった。

 

 

 

 2.500m美術館「シュプールを追いかけて」
 

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 500m美術館へ。ここでは、中崎透×札幌×スキーによる「シュプールを追いかけて」を展示している。シュプールとはスキーで滑った跡のこと。500m美術館は、札幌市営地下鉄の大通駅とバスセンター前駅をつなぐ地下通路の壁を整備した展示スペースで、部分的にはガラスケースなどもある。とにかく横に長いのが特徴で、奥行きはほぼない。よく言えばユニークな場所であるが、そもそもが通路なので展示における制約も多そうだ。
 
 この展覧会は、アーティスト中崎透さんを中心にボランティアチーム「SIAF500メーターズ」など様々な人が関わりながら札幌におけるスキーの歴史をリサーチ等し、まとめたもの。もともとスキー好きだった中崎さんは以前青森でも同タイトルのスキーをテーマとした展覧会を企画したことがあったそうだ。

 

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 内容は大通を起点として東へ進むに従って時系列順になっている。出来事や用語解説、インタビューの抜粋のパネル、書籍やポスター、スキー板などの史料、中崎さんによるペインティングなどがずらっと並んでいた。大倉山の「札幌オリンピックミュージアム」からたくさん所蔵品を借りているそうだ。一つの流れで何かをみせるというよりは、それぞれの時点でのトピックについて掘り下げていったものが提示されているようだ。私には史料が多すぎて一度で最初から最後まで集中して見ることはできなかった。ただそれがこの展覧会(作品?)の質を大きく損ねているかというとそうでもなくて、部分的に読むだけでも興味深いところがたくさんある。スキーの普及、発展をめぐる様々な人やモノにまつわる逸話の数々を読んでいくと、スキーはただの趣味のスポーツではなく、ひとつの文化を形作っていることが分かってくる。せっかく通路にあるのだから、札幌市民は通勤や通学の途中で少しづつ読むのもいいのかもしれない。

 

 

 

 3.HUG さわひらき「うろ・うろ・うろ」

  

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 その後は、「シュプールを追いかけて」を見るのを中断し、北海道教育大学アーツ&スポーツ文化複合施設HUGへ。この建物は普段は学生の作品展などで使われている札幌軟石でできた立派な倉だ。ここでは、さわひらき「うろ・うろ・うろ」を展示。暗室でオブジェと大きな二つの映像が展開される。

 

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 モエレ沼夕張市のシューパロ湖で、氷点下のなか積雪を掻き氷に穴をあけ、照明を水中に沈めるなどした梅田哲也との「フィールドアクション」の記録を構成した映像作品だった。不気味で神秘的で意味不明だが時々ハッとするような美しいシーンがあって、40分以上のループ映像だがあまり見飽きない。特に明確なストーリーがあるわけでもないので途中から見ても大丈夫だと思う。会場内にはソーマトロープを用いたオブジェもあり、映像の雰囲気と合っていた。
 
 
 

 4.DJ盆踊り

 

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 また地下通路に戻り、「シュプールを追いかけて」の残りを見、大通あたりで夕食。安い冷やし中華を食べて大通公園へ。この日はSIAFのプログラムである岸野雄一と珍盤亭娯楽師匠による「DJ盆踊りinさっぽろ夏まつり」が開かれるのだ。(参考:インタビュー:珍盤亭娯楽師匠
 
 通常の夏祭りの盆踊りに続いて、20時半から岸野さんと師匠が櫓に登場。少しの準備時間のあと、SIAFのイベントである旨などが説明された。

 
 まずは定番の北海盆唄から。続いて北海盆唄高速バージョン、函館いか踊りなどなど。知らない曲も多かったが全く問題にならない。僕は地元の盆踊りには行かないし行っても踊らないのだが今回はかなりノれた。祭の妖精、祭太郎さんもいた。札幌人はシャイだと聞くが、最後はもうほとんどディスコ状態でみんな好き勝手に踊っていた。

 素朴な感想だが音楽のもつ力を感じた。人を動かす力だ。『火縄銃でボーン!!』の歌詞に「え~じゃないか え~じゃないか」と入っているのは偶然ではない。時間通りに終わったが、アンコールの声があがり特別にもう一曲。やはり北海盆唄でしかもサンババージョン。踊りつかれて帰宅。

 
 盛りだくさんな一日だった。この調子でSIAFめぐりをして体力がもつのだろうか。
 
に続く)