札幌国際芸術祭2017(SIAF2017)見聞①

 

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 目次

 1.札幌国際芸術祭2017の概要

 2.JRタワープラニスホールまで

 3.大丸

 4.「大漁居酒屋てっちゃん」の店内ツアー

 5.金市館ビルへ

 

 

 

 1.札幌国際芸術祭2017の概要

 
 札幌国際芸術祭2017(略称:SIAF2017)が開幕した。三年に一度のトリエンナーレ形式のイベントであり、前回の2014年に引き続き二度目の開催だ。8月6日から10月1日の57日間、北海道札幌市の30か所以上で作品が展示され、同時にあちこちで多様なイベントが開催される。ゲストディレクターは音楽家の大友良英
 札幌市は2006年に「創造都市さっぽろ」宣言を行い、2013年にはアジア初のメディアアーツ都市としてユネスコの創造都市ネットワークへ加盟した。さらに芸術祭開催に向けた市民レベルの運動やプレイベントもあり、芸術祭の開催に至っている。だから既定路線としてメディアアートを扱う傾向があり(前回のゲストディレクターは坂本龍一だった)、また市民との関りは深いといえよう。

 
 テーマは「芸術祭ってなんだ?-ガラクタの星座たち―」。
 これについての想いは大友さんがパンフレットに詳しく書いている。この文章は芸術祭サイトや無料のパンフレットにも載っているはずだ。しかも読み易いので芸術祭鑑賞前に一読をお勧めする。

 自分なりに間違いを恐れず要約すると、「市民参加の芸術祭なので市民の数だけ答えがあるはずだ。正解のないことを豊かさとして受け入れ、祭りをつくっていくなかで見えてきたものを芸術とよぶことが、芸術の本来のあり方に近いのではないか。モエレ沼公園を計画する際にイサム・ノグチが『人間が傷つけた土地をアートで再生する。それは僕の仕事です』と語ったように、見向きもされなかったガラクタを再生するような、あらゆる領域の作家、作品を登場させたい。それらに接したときに、参加者ひとりひとりが見出したつながりは喩えるなら星座であり、それは「再生」の物語である」というところではないか。

 
 今回のSIAFは作品の展示だけでなく音楽や舞台の分野のイベントが多く、ワークショップやプロジェクト形式の活動もある。また、全体的に鑑賞中に刻々と変化していくような作品が目につく。いつどの作品を見て、どのイベントに参加したかで、芸術祭への印象は変わるだろう。多数の賛同を得られるような芸術祭を総括した評価は難しいかもしれない。評論家泣かせ、短期滞在のアートファン泣かせだ。
 SIAFをできる限り楽しもうと思えば、もはや札幌に住むほかない(大友さんは現在札幌在住らしい)。そもそもが市民運動から始まり、地域おこしとは縁遠いであろう札幌での芸術祭だが、その意味でも市民寄りの芸術祭と言える。何かと言えばやれ動員数だの経済効果だのといった外向きな尺度に過度にさらされがちな芸術祭においては、多少内向きすぎるくらいがちょうどいいのかもしれない。

 
 長い前置きはこのくらいにして、個別の作品を見て回った記録を書いていきたい。SIAF2017とは直接かかわらない市内のギャラリーでの展示などもいくつか見たので、それも見た順に書いていく。
 

以下ネタバレ注意。

  

 

 

 8月14日

 

 

 2.JRタワープラニスホールまで

 

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 まずは札幌駅に隣接するJRタワーから見始めた。
 札幌駅西口改札前には木彫家・藤戸竹喜氏によるアイヌの長老像やアイヌの代表的な木彫家6名による祭祀の道具であるイクパスイをモチーフにしたオブジェが設置されている。道外から来る人にはぜひ見せたい作品だ。これは常設でありSIAFと関係ない。

 

 

 
 JRタワープラニスホールへは、慣れていないとかなり行きにくい。ビックカメラが入っている建物の11階だが、エレベーターはよく混んでいるので、エスカレータで「札幌ら~めん共和国」が入っている10階まで行き階段を使うと早い。だがこの階段の位置もわかりにくい。ここに限っては特にパンフレットに詳細な地図などあるとよいのだが。
 エスカレータを使って11階までやっとたどり着き、パスポートをゲット。

 

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 ここで開かれている「札幌デザイン開拓使 サッポロ発のグラフィックデザイン~栗谷川健一から初音ミクまで」は、「デザインってなんだ?」という問いを、札幌にまつわるデザインで考えようとするものだ。

 
 まず最初に吉田初三郎の鳥観図が置かれている。吉田初三郎は札幌出身者や在住者ではないが、北海道や樺太を描いた作品は多いらしい(鳥瞰図/札幌市の図書館)。次に開拓使のシンボルである赤の五稜星と、この展示のマークにもなっている赤の七稜星の紹介。これは開拓使長官であった黒田清隆が考案したが没になったもので、のちに北海道のマークに取り入れられた。その後は、北海道的なイメージを作り上げたともいわれるグラフィックデザイナー栗谷川健一札幌オリンピックのデザインについての展示。次の部屋は現代までの北海道の企業製品のパッケージデザインや北海道で発表されたグラフィックデザインを紹介。特にすすきののニッカの看板をわざわざ再現したのには驚かされる。それらと向かい合う壁では一面に北海道の企業ロゴが展示されている。動く初音ミクが先述の五稜星と七稜星について紹介するコーナーも。最後の部屋では「札幌デザイン史年表」が壁にあり、資料の閲覧もできる。

 

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 まずここまで書いてわかる通り、札幌に関わる比重は大きいものの、結果的に北海道全体を対象にしている点で焦点がずれている(札幌に限定した意味もよくわからない)。また内容としては、北海道のデザインの独自性や特徴を示すヒントは特に示されておらず、見ごたえはあるものの、単になにやらデザインらしきものを集めただけ、という印象を受けた。まとまった資料を前にして北海道のデザインを見直す機会にはなるだろうが、結論を見る側に投げ過ぎだと思う。「デザインってなんだ?」が、いわゆるキュレーションの、不在の言い訳に使われているようにも見えた。もっとも、札幌のデザインの変革を記した資料は少なく通史もまだないとのことだから、この展示をスタート地点として更に研究が深まっていくものと思われるし、それも企画の意図のうちだろう。

 それに加えこの展覧会に限らないことだが、何かと言えば開拓使から北海道の歴史を記述し始める癖はいい加減なんとかした方がいいと思う。昨今の研究成果を取り入れれば、明治以前の北海道に対するイメージを形作ったグラフィック的な祖先を辿る試みくらいできそうだと感じるのだが、どうだろう。

 

 

 3.大丸

 

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 その後は、デパートの大丸札幌店で展示があるようなので行ってみた。休憩スペースに「大風呂敷プロジェクト」の風呂敷が飾ってあるだけなので、買い物ついでにでも見ればよいと思う。
 

 

 4.「大漁居酒屋てっちゃん」の店内ツアー

 

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 地下歩行空間を使ってすすきのへ。「大漁居酒屋てっちゃん」の店内ツアーが行われるからだ。集合時間の15時の10分くらい前に着いたが、すでに7、8人は待機していた。スタッフの方に案内されてエレベーターや階段で店内に向かう。

 

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 やや暗めの店内は、そこに足を踏み入れた瞬間からついきょろきょろしてしまう。あたりがとにかく「もの」だらけ。座席と床とテーブル以外はなんでも詰め込めるだけ詰め込んだといった具合で、よくある「三丁目の夕日」をイメージしたような、懐古趣味の居酒屋などは軽く消し飛んでしまう物量だ。昔懐かしいめんこやブロマイド、お面はたくさんあるのだが、よく見るとところどころに最近の「もの」もあり、常にアップデートされているようである。やや褪せた色合いのせいか、不思議と落ち着く空間だった。

 出迎えた店主の「てっちゃん」は気さくに来場者の質問に答えていた。このお店は都築響一さんの雑誌の連載に掲載されたことがきっかけで知られるようになったという。とにかく暇さえあれば掃除をしているそうだ。芸術祭をきっかけにもっと市井のすごい人、面白い人にスポットライトが当たるといい、という話をした。

 

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 ここは企画「札幌の三至宝 アートはこれを超えられるか!」の一会場である(参考:「札幌の三至宝」についての記事→〈大漁居酒屋てっちゃん〉と〈レトロスペース坂会館〉は札幌の知られざる至宝!?|「colocal コロカル」)。

 私はこの居酒屋はあくまで居酒屋で、アートだとは思わない。下手にアートとして見ると価値を損なう場合もあるかもしれない。そもそもアートと比較しようというのがアートの側のとんだ思い上がりだとも思う。これを芸術祭というフレームの中で鑑賞してしまうことに戸惑いもあるし、少しの暴力性も感じる。ただ、たとえどんなことを考えていても、ここにいると誰もが「すごい」「よく集めたなぁ」「なんでこんなにいっぱいあるの!?」「あーこれ懐かしい~」と思ってしまう。それは店主の狙い通りだろう。難しいことを考えずとも、それでいいのかもしれない。そういう気にさせられる。

 ここよりもう少し南よりの、北専プラザ佐野ビル会場でも大漁居酒屋てっちゃんのサテライト展とでも言うべき一室があるが、それは後述する。

 

 

 5.金市館ビルへ
 

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(完全に同化しているSIAFの旗)

 
 一時間ほどで店を出て金市館ビルの会場へ。時刻は16時頃。以前はラルズという古き良きデパートだったが、今はパチスロ店が入居していて、入りにくいことこの上ない。パチスロ店内を通らずともエレベータで7階まで上がることができる。私にとっては懐かしいエレベーターに何年かぶりで乗った。

 

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 (へ続く)