こたつ島ブログ

書き手 佐藤拓実(美術家)

十勝日記① 帯広まで

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 十勝方面へ出かけた。豊頃町十弗にあるArtLabo北舟での展示のためである。その途中で見たいろいろを以下に書く。
 
 8月8日

 
 羽田空港はさすが夏休み、かなり混んでいる。はやめに出てきてよかった。初めて自動で荷物を預ける機械を使った。
 お土産はあまり変わり映えのしないチョコ系のお菓子が目立つので選ぶのにうんざり。

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 新千歳空港へ。

 

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 札幌の実家で一泊。
 

 

 

 
 8月9日

 
 札幌からはバスで帯広へ向かう。本当は夜行バスがあれば便利なのだが、今はない。出発まで時間があったので古本屋を見たりギャラリーを見たり。北大前の弘南堂書店で『箱館通宝鋳造の顛末』など買う。

 

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 地下歩行空間(愛称:チカホ)など札幌駅周辺では、札幌国際芸術祭2017(略称:SIAF2017)の「大風呂敷プロジェクト」でつくられた色とりどりの大風呂敷が飾られていた。祭りをささやかに盛り上げている感じだ。

 
 私は事前にSIAF2017のパスポート引換券を買っていた。ちょうど札幌駅のJRタワー東コンコースにインフォメーションセンターがあった。パンフレットを貰うついでに引き換えだけできるか訊いたところ不可で、ここはあくまで案内のみ行うらしい。このインフォメーションから一番近い会場の「JRタワーラニスホール」ではパスポート引き換えや販売も行っている。

 
 前回のSIAF2014の時はチカホに展示会場がありインフォメーションもあったのだが、今回はなかった。チカホには先述の「大風呂敷」が飾られているのみで、赤レンガ道庁も会場だった前回と比べると、札幌駅周辺エリアと大通エリアとの間に大きな空白のある感は否めない。
 

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 この日はまずギャラリー門馬の「河口龍夫 垂直の音と階段時間」を見た。SIAFとは直接関係ない展示だが、前回の芸術祭の時もここでは河口龍夫の個展が行われていた。8月12日まで。ギャラリー門馬は気になる展示がよく行われるが、アクセスはさほど良くないのでつい足が遠のいてしまう。中心部からはいくつかのバスで近くまで行けるが、バス停によってはかなり急な坂を歩かなくてはいけない。

 

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 展示は、階段を彫刻として比喩的に捉えた上での、階段上の移動に伴う視点の変化や大地との関係における変化、さらに階段上で大地に対して垂直に移動する間に流れる時間への考察をめぐるドローイングやオブジェ群であった。展示を「階段を芸術として捉えることは可能か?」という問いと捉えれば、SIAF2017のテーマとも無関係ではないような気もする。

 本を使ったオブジェもあった。本は一瞬で読むことはできないから、時間を孕む物体といえる。既存の作文用紙を使ったドローイングも同じ意味で扱っているのだろう。やはり素材の活かし方がうまいと感じた。

 

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 閉鎖が決まっているキャノンギャラリー札幌では「宇井真紀子写真展 アイヌ、100人のいま」を見た。全国各地のアイヌ民族を、被写体の撮られたい場所と姿で撮り、次の被写体を指名してもらうという方法で100組の肖像を撮影したという。被写体の「今一番いいたいこと」も一緒に展示されている。

 このシリーズの目的の一つは、特定のイメージに縛られない多様なアイヌ像を示すことだろう。成功しているかどうかは別としても、そのことに啓蒙的な意義はあろう。ただ私が気になるのは、それを撮る側の和人としての撮影者の、身の置き所や動機である。それは和人のひとりとしての贖罪のためなのか、それとも出自は関係ない何物でもない自分を想定しているのか。そしてこれらのことは可能なのか。考えさせられる。
 

 

 

 
 14時半頃に遅めの昼食。札幌駅の地下でビーフタコス440円。小腹を満たすにはちょうど良い。
 15時半頃定刻出発。この札幌帯広間のバスはポテトライナーという。

 

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 19時過ぎ、やや早めに帯広駅へ着く。駅の中の店はほとんど閉まっていた。小雨が降っていた。
 この日は友人宅に宿泊。まだ豊頃には着かない。
 

へ続く)