こたつ島ブログ

書き手 佐藤拓実(美術家)

天塩川日記⑦

(北星八幡神社の鳥居) ⑥の続きです。恩根内滞在7日目、天塩川を辿っている。この日は南下しました。 2019.5.7. ・名寄へ 滞在7日目は7時起床。 大友さんの腰は昨日の午前中に休んだのが大きかったようで、幸い快方に向かっている。天塩川温泉も効いたのだ…

天塩川日記⑥

(埋もれたシカの角) ⑤の続き。「アートヴィレッジ恩根内」で10日間の滞在制作をした記録、その6日目です。 2019.5.6. ・恩根内散策 滞在6日目。朝起きて携帯を見ると大友さんから「腰痛のため午前は休みにしたい」と連絡が入っていた。やはり連日の移動と撮…

天塩川日記⑤

(ピンネシリ) ④の続き。恩根内滞在5日目は番外編。なんとオホーツク海へ。 2019.5.5. ・オホーツクへ 滞在5日目は朝8時半頃に起床。 午前中、大友さんは札幌に戻るご家族を名寄まで車で送ってくるとのことで、9時ころお見送りした。大友さんの子どもたちと…

天塩川日記④

(弘法寺の線刻仏) ③の続き。恩根内滞在4日目が始まります。 2019.5.4. ・白樺を描く 滞在4日目。7時起床。なんとなく頭がいたい。疲れが溜まってきているのかもしれないと思いつつも「むしろこういう時は動いた方が元気がでるのだ」と自分に言い聞かせつつ…

天塩川日記③

(「北海道命名の地」の近くにて) ②の続き。北海道の美深町にある「アートヴィレッジ恩根内」というところで10日間の滞在制作を行った記録です。天塩川という全国第4位の大河をたどっています。 2019.5.3. ・天塩川河口への道 滞在3日目。 6時前に起床。前…

天塩川日記②

(アートヴィレッジ恩根内近くにて) ①の続き。北海道の美深町にある「アートヴィレッジ恩根内」というところで10日間の滞在制作を行い、天塩川を辿った記録です。2日目。 2019.5.2. ・初めての朝 滞在2日目。恩根内で迎える初めての朝。ちょっと遅めに10時…

天塩川日記①

(恩根内へ向かう途中の景色) 北海道の美深町にある「アートヴィレッジ恩根内(おんねない)」というところで10日間の滞在制作を行った記録です。 まずは札幌から旭川へ向かいます。そこから恩根内までは電車で。 2019.5.1. ・旭川へ 朝7時ころに札幌を出た。…

松前から函館へ日記④

(北方民族資料館所蔵の山丹服) ③の続き。松前での一日が終わり、朝から函館へ向かいます。 2019.4.28. ・朝の松前 5時ころ起床してすぐ、前日行った福山波止場へ。使い慣れたペンを2、3本と、買ったばかりの携帯水彩絵の具を持っていく。 空はすっかり気…

松前から函館へ日記③

(松前城を振り返る) ②の続き。松前町でいろいろ見学しました。 ・2019.4.27. ③ 外は少し雨脚が強まってきた。坂を下る途中、崩れかけた石垣をみた。きれいに直線的に加工された石。その上から何本も生えている大木。なぜかとても印象に残った。松前の人に…

松前から函館へ日記②

(松前、寺町の猫) ①の続き。松前へ3年ぶりに行きました。以前松前へ来たのはあるアーティスト向けプログラムの一環でした。今回はほぼ丸一日というわずかな時間ながらも、その時見られなかった場所に行ってみたりもう一度見たい場所に行ったりしてなかなか…

松前から函館へ日記①

(羽田空港の飛行機、離陸前) 3年ぶりに松前、そして函館へ行きました。その日記です。まずは札幌へ。そして高速バスで函館へ行き、木古内まで電車。木古内からはバスで松前へ行きました。 ・10連休の空港 2019.4.26. 前日の晩は23時には布団に入ったのだが…

大友真志“Mourai”を見て(大友真志作品の第一印象)

(会場の様子) 2019.3.26. 新宿のphotographers galleryで開かれていた大友真志さんの個展“Mourai”へ行った。(https://pg-web.net/exhibition/mourai/) 大友さんの作品は以前札幌で見たことがある。その時はグループ展(https://pg-web.net/news/masashi-…

五美大展 (平成30年度 第42回 東京五美術大学連合卒業・終了制作展)のよかった作品

(会場の壁) 平成30年度 第42回 東京五美術大学連合卒業・終了制作展(通称・五美大展)に行った。毎年莫大な量の作品に圧倒されて疲れるので今年は行くつもりはなかったのだがなんとなく気まぐれで行ってしまった。 なお、作品情報は会場のキャプションに基…

冬と雪

冬の静かな夜はいい。吐く息が白くなるような張り詰めた寒さがいい。そして、もしそこに降り積もる雪さえあれば、もはや言うことはなにもない。 全国的に寒波が到来し、東京でも何日も前から雪の予報が出ていた。朝起きたら案の定、雪は降っていた。だがそれ…

「北海道百年記念塔について思ったこと」から一年経って思っていること

(JR札幌駅地下街にて。右側が北海道百年記念塔の写真) ・あれから一年 「北海道百年記念塔について思ったこと」というブログ記事を書いてから一年経った。これは百年記念塔の解体検討を伝えるニュース記事をみて、突発的また反射的に書いたものだ。 http:/…

2018年(平成30年)よかった展覧会

アラーキーの「ミューズ」の告発や、リーディングミュージアムなる制度の発表、東大での宇佐美圭司作品の廃棄など、政治同様にひどいニュースが多い印象の2018年。つい暗くなってしまうが、いい展覧会をたくさんみることができた(もちろん悪い展覧会やつま…

私と郷土玩具

(左:京都、伏見人形の窯元「丹嘉」「三竦み」 右:東京「今戸焼 白井」の三竦み) ・郷土玩具? 全国各地に郷土玩具と呼ばれるものがある。例えば年賀はがきや切手にあしらわれている干支の置物がそれである。各地のこけしやだるまの類を含めてもいいだろ…

東京で北海道を探す「蝦夷地探検家 秦檍丸 先生 墓」

根津から谷中へ向かって坂道を歩いていた。落ち葉ももうだいたい散り終えたかという晩秋。いかにも昔からありそうな佇まいの商店や住宅が並ぶ街を抜け、だんだんと道の両側にお寺が増えてくる。 車道の反対側に玉林寺という禅寺があった。ふと気になって信号…

石狩日記① 

(「無辜の民」への道) 「石狩日記」というと、松浦武四郎の「石狩日誌」を思い出す人もいるだろう。 石狩川流域にはかつて13の「場所」(アイヌと交易を行う区域)があり、「イシカリ場所」と呼ばれた。はじめ慶長年間に開設されたというからかなり古い。 …

山形日記⑤ 笹野一刀彫と笹野観音

④の続き。いよいよ米沢は笹野へとやってきた。山形に来た目的のひとつ、民芸品の笹野一刀彫はここで制作されている。 ・笹野観光 大きな「お鷹ポッポ」が建っている。笹野一刀彫の代表的な意匠だ。笹野一刀彫とは、木を削って簡単に着色した民芸品で、「お鷹…

山形日記④ 黒鳥観音と鶏と猫と蛸と

③の続き。 ・黒鳥観音 まず線香をあげてからお堂の中へ。扉は半分開いて蝋燭にも火がついていた。正面には祭壇といくつかの提灯があり、中央の厨子には観音像。左右にも小さめの仏像がずらっと並ぶ。手前には木魚がいくつか並んでいた。さすがに窓は埋まって…

山形日記 ③ 小松沢観音

②の続き。山形旅行の2日目。 ・再び村山へ 朝5時半頃に起きてすぐ荷物をまとめ、昨晩買った安い弁当を掻き込んでから山形市のビジネスホテルを出た。この日の予定は、午前中にムカサリ絵馬を見るため観音堂を二か所まわり、山形駅まで戻ってきて乗り換えて、…

浜田知明の訃報に接して

(神奈川県立近代美術館(2010年)展示図録。表紙の作品は「アレレ…」(1974年)) ・浜田知明の訃報 戦後日本を代表する銅版画家を挙げれば、駒井哲郎、長谷川潔、浜口陽三、そして浜田知明の名がでるだろう(ここに池田満寿夫を加える人もいるかも知れない)。 先…

山形日記 ② 最上徳内記念館と巨大ぞうり

①の続き。立石寺から村山市へ。 ・村山駅 14時ごろ村山駅に着く。 「ようこそ バラ・そば・徳内の街 村山市へ」という幕があった。「徳内」だけは聞きなれない言葉だという人も多かろう。これはなにか農作物とか名産品の名前なのではない。いわゆる郷土の偉…

山形日記 ① 若松観音と逆回しの立石寺

山形県に一泊二日の強行軍で行ってみた。 私は東北六県の中では福島県のいわき市より北に行ったことがなかった。いよいよ本格的に東北に足を踏み入れたという変な実感があった。そのなかで今回は、みちのく山形の主に内陸の文化の一端を垣間見た、ということ…

「長万部写真道場 再考」⑤ シンポジウム③

(長万部の海) ④の続き。 1.パネルディスカッション 2018.2.25.③ 12時55分頃から第2部。中村、倉石、高橋の三名によるパネルディスカッションが行われた。題は「北海道における写真記録のこれから」。以下要約。 (中村)まず講演の主旨の説明を。長万部…

「長万部写真道場 再考」④ シンポジウム②

(長万部の海沿い) ③の続き。長万部でのシンポジウムについて。 1.基調講演2 2018.2.25. ② 基調講演2は、明治大学理工学研究科総合芸術系教授の倉石信乃氏による「『掛川源一郎写真集 大地に生きるー北海道の沖縄村ー』を読む」だ。 表題にある掛川源一…

「長万部写真道場 再考」③ シンポジウム①

(まんべくん) ②の続き。長万部の写真展の記録です。 1.シンポジウムへ 2018.2.25.① 明くる25日、写真展会場のすぐ横のホールで開かれたシンポジウムを10時から聴いた。 まず、長万部町長の木幡正志氏の挨拶があった。 以前にも写真道場の元メンバーから…

「長万部写真道場 再考」② 写真展の様子

(写真台紙の文字) ①の続き。 長万部町で行われた写真展「長万部写真道場 再考」の様子を抜粋して紹介したい。 そもそも「長万部写真道場」とは何か? 1951(昭和26)年に「長万部カメラ倶楽部」として発足した町内のアマチュアカメラマンの団体で、1967年…

「長万部写真道場 再考」① 長万部についてと撮影地見学ツアー

(長万部駅前。「毛ガニ」「東京理科大」の文字と新幹線の模型。) 1、長万部について 長万部町へ初めて行った。 内浦湾に面した渡島北部、伊達市の対岸に位置するこの町は、名物の「かにめし」や温泉を目当てに訪れる人も多い。札幌からだと車で約3時間。…